大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和47年(特わ)346号 判決 1972年9月13日

本店所在地

東京都千代田区麹町二丁目三番一号

麹町ガーデンビル内

基和産業株式会社

(右代表者代表取締役 榎本義人)

国籍

(慶尚北道慶州郡陽北面安洞里)

住居

岐阜県各務原市前渡西町一番地

会社役員

高山政昭こと

孫益富

一九二八年二月五日生

法人税法違反各被告事件

出席検察官

米田昭

主文

被告会社を罰金一、二〇〇円に、被告人を懲役八月にそれぞれ処する。

ただし被告人に対し本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社基和産業株式会社は、東京都千代田区麹町二丁目三番一号麹町ガーデンビル内に本店を置き、不動産業、ボウリング場の経営等を営業目的とする資本金七、〇〇〇万円の株式会社であり、被告人高山政昭こと孫益富は、昭和四二年一月から同四七年三月一日まで右被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統轄していたものであるが、被告人は、事業拡張の資金を得るため被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外して簿外預金を設定するなどの不正な方法により所得を秘匿したうえ、昭和四四年三月一日より同四五年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一七一、七六二、二四〇円あつたにもかかわらず、昭和四五年四月三〇日東京都千代田区大手町一丁目九番二号所在所轄麹町税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二五、五〇三、七五九円で納付すべき法人税額が七、八八四、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、同会社の右事業年度の正規の法人税額五九、〇五三、六〇〇円と右申告税額との差額五一、一六九、六〇〇円を法定の納期限までに納付せず、もつて同額の法人税をほ脱したものである。

(所得および税額の算定は別紙第一、第二記載のとおりである。)

(証拠の標目)

一、被告人の当公判廷における供述、検察官に対する供述調書

一、被告人に対する大蔵事務官の質問てん末書二通

一、登記官吏認証にかかる昭和四七年五月二二日付商業登記簿謄本

一、杉島盛次、李基文、李正煕の検察官に対する各供述調書

一、杉島盛次(三通)、西村キミ子、李基文(三通)に対する大蔵事務官の各質問てん末書

一、杉島盛次、小林行雄、松岡寛(二通)の作成にかかる各上申書

一、黄福周(四通)、近藤喜佐雄(二通)、李考沫(三通)、松崎達二、斉藤正之にかかる各証明書

一、大蔵事務官河内徳世作成の「千葉ボウリングセンター売上メモ写真について」と題する書面

一、大蔵事務官河内徳世(四通)、戸田徳松、伊藤昭三(二通)、横田実(二通)作成の各調査書

一、押収にかかる歩人税確定申告書(昭和四七年押第一〇六一号の一)

(法令の適用)

一、判示所為につき 法人税法一五九条、被告会社につきさらに同法一六四条一項、被告人については懲役刑選択

一、執行猶予につき 刑法二五条一項

(被告会社、被告人の主張について)

被告会社、被告人は本件起訴対象事業年度内においてさらに総額三、九〇〇万円を損害賠償として簿外で支出しているから、これを損金として算入すべきであると主張する。

そこで検討すると、被告人の当公判廷における供述、豊川豊の検察官に対する供述調書、被告会社・被告人提出の領収書六枚(昭和四七年押第一〇六一号の二)を総合すれば、被告会社では昭和四一年六月一〇日千葉ボウリングセンターの建設工事を五代工業株式会社に代金約四三、〇〇〇万円で請負わせる旨契約したが、被告会社は昭和四二年三月二〇日に至り右五代工業株式会社との請負契約を一方的に破棄するに至つたこと、この請負契約解除のため被告会社は右五代工業株式会社から損害賠償を求められ、両社の間で種々の交渉の結果昭和四三年一二月一〇日被告会社が同月末日より毎月末金三二五万円ずつ一二回にわたり合計三、九〇〇万円を右損害賠償金およびこれに対する既往分の遅延利息として右五代工業株式会社に支払う旨の示談が成立したこと、しかし実際に被告会社が支払つたのは資金繰りの関係から昭和四四年四月を初回として隔月に昭和四五年二月まで各六五〇万円ずつ六回であつたこと、以上の各事実が認められ、結局被告会社は本件起訴対象年度において合計三、九〇〇万円の損害賠償金を現実に支出した事実を認めることができる。

しかしながら、法人税法二二条四項によれば、各事業年度の法人所得金額の計算は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準すなわち本件の場合に即していえばいわゆる権利確定主義の原則によつてなされるべきであつて、この原則を適用するときは被告会社が右の損害賠償義務の履行による金員の支出を損金として計上すべき事業年度は、右の損害賠償債務の支出の時期、方法、金額が前認定のとおり示談契約をもつて具体的に確定した昭和四三年一二月一〇日の属する事業年度であり、右の被告会社および被告人が主張している簿外経費は本件起訴対象年度の損金としては計上すべきものではないと言わなければならない。被告会社、被告人の右主張は採用できない。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 池田真一)

別紙第一 修正損益計算書

基和産業株式会社

自 昭和44年3月1日

至 昭和45年2月28日

<省略>

<省略>

別紙第二 税額計算書

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例